凡人を育てるための日本の学校

エディ・スナオの呟き

自尊心教育の害

自信満々の女の子のイラスト

 英語ではセルフ・エスティームと呼ばれる自尊心。

 教育現場では、「子どもたちにしっかり育もう!」のような感じで使われ、よく耳にする言葉です。

 自尊心とは、ざっくりいうと、「自分が有能であるという自信と、自分に価値があるという自尊」の2つの要素から成り立っていると言われています。

 

これが教育界で大事にされるようになったのは、カナダ・アメリカの心理療法家、ナサニエル・ブランデンさんが、1969年に本を出版し、有名になりました。

※参考:自信を育てる心理学新装版 「自己評価」入門 [ ナサニエル・ブランデン ](邦訳された有名な著書)

 

 そして、多くの研究者によって研究がなされ、「自尊心が、成功、心理的健康、幸福感、人としての成長に関係している。」とたくさん報告されました。実際に著書では、「自尊心の欠如は、不安感・憂鬱感・恐怖感、アルコールや薬物などの乱用、成績不振、暴力・虐待・自殺などに関わっている。」と報告されています。そこから、自尊心を高める方法等についての書籍が多数出版されるようになりました。カルフォルニア州では多額な予算つけられ、自尊心教育が盛んになりました。

 しかし、その結果、自尊心は高まったものの、それによって得られるはずの効果はなんと出ませんでした。さらに、自尊心の高さは、子どもの飲酒・喫煙・薬物・性交渉率を下げることもなかったんですね。(1)(2)

 似たようなことが、1998年のブリティッシュコロンビア大学の研究でも行われていまして、自信があっても成績は良くならず、煙草、飲酒、薬物なども減らず、高かったのはナルシストのレベルだけだったようです。(3) ひどい…笑

 実際に因果関係というよりかは、相関関係といったところですね。前回も紹介した成長マインドセットを持っている子どもが、成績が上がるのと同時に、自尊心も育っていくような関係ですね。過去記事:成長マインドセット

 

 ここら辺に関しては、アメリカの心理学者、ロイ・バウマイスターさんが研究をしています。

※参考:WILLPOWER 意志力の科学/ロイ・バウマイスター,ジョン・ティアニー【著】,渡会圭子【訳※廃盤のため、中古であることをご了承ください。

 

 自尊心が高すぎると、ナルシストになることも指摘されています。また、根拠なき自信になってしまうと、人から傷つけられることを極度に嫌い、受け入れられず、攻撃的になり、いじめに発展することもあるそうです。

 自尊心という言葉が先走ると、マイナスになってしまいますね(^^;

 

 今まで一括りに「自尊心」と言っていましたが、その中には、自分の良いところも悪いところも受け入れられる「セルフ・アクセプタンス(自己受容)」と言うものが含まれています。これを持っている子どもは、失敗があろうとも安定した生活を送っています。

 しかし、他人との比較などからくる、「条件付きの」自尊心や「根拠なき」自尊心は闇だらけです。ナルシストや問題行動につながっているのはこれらのためでしょう。現在の日本の教育では、これらばかりが重視されています…

 

 これに関して、ロンドン大学のプレミュージック博士は、自信は必要ないと言っています。「大切なのは自信ではなく、能力を持つことだ。」正しく、正論です。笑

※参考:Confidence The surprising truth about how much you need and how to get it【電子書籍】[ Tomas Chamorro-Premuzic ]

 

 研究によると、自分に自信がある人の多くは、都合よく現実をねじ曲げているだけだったり(4)、「自信がある」学生たちは、みなウソつきで、信頼できず、ずるい人間だと、高確率で思われていたり(5)します。

 

 それなのに、日本の学校では、

 1.生徒に「大丈夫だ!」と根拠のない自信を植え付ける → 2.生徒が自分の能力と自信に安心する → 3.何もしなくなる → 4.成績が下がる → 5.生徒が自分の能力を脅かさるのを恐れる → 6.言い訳(セルフ・ハンディキャッピング)し、努力しなくなる → 7.さらに成績が下がる → 8.「君なら大丈夫だ」とさらに言われる…

 的なスパイラルでしょうね(^^;

 

 もっとここら辺の研究などを知って、正しき教育方針を掲げてもらいたいものです。個々人の先生方も学んでもらいたいものです。

 

※自己受容感を高めるセルフ・コンパッションはこちら

セルフ・コンパッションを育もう!